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第8章 忘れられた顔

last update publish date: 2025-12-21 00:33:56

 処置室の空気は焦げた甘い匂いで満ちていた。

 炭のように黒く崩れた肉片が床に散らばり、まだ微かに燻っている。

 吉川は息を荒げ、火傷した左腕を押さえた。皮膚が赤く爛れ、衣服に張りついている。

「今のは一体……」

 千鶴が唖然としたようすで呟く。

 吉川は、机の縁に手をつき、深く息を吐いた。

 左腕の火傷が酷く疼く。千鶴にお願いして、消毒と軟膏、そして湿潤療法での処理を終わらせ、包帯を巻いた。

「ふぅ……」

 治療を終わらせ、椅子に体を預けたその時。

 窓の隙間から入ってきた風が、カルテ棚から一枚の紙を持ち上げた

 カルテはひらひらと舞い、机の上にたどり着く。

「古い建物だから隙間風が――」

 カルテの名前が目に入る。

 ――森谷健太。

 そうだ。

 ――少年だったはずだ。確かに笑顔を見たことがある。

 吉川は痛む腕に構うこともせず、カルテ棚を漁る。

 目指していたものは、一番上に乗っていた。

 ――林田美穂。

 吉川は二つのカルテを並べ、穴が開くほどそれを見つめる。

 森谷健太。

 林田美穗。

 その二つの名を並べた瞬間、喉がひきつるように動いた。

 記憶が流れ込み、ようやく顔と名
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